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モンスターハンター!1 10章

銀嶺の双剣士 終章です。


モンスターハンター! 銀嶺の双剣士


 10章 エピローグ

「おおいヒュー、大変なんだ。ちょっと来てくれー!」
 せっぱ詰まった悲鳴が聞こえて、ポッケ村付き新米ハンター、ヒュー・パーシヴァルは威勢よく家から飛び出した。
「おう! なんだ、ついに飛竜でも出たのかっ!?」
「暴れポポだ、止めてくれええええええええ!! でも傷はつけないでくれ頼むっ」
「んなことできるか、無茶言うな!って来てる来てる来てる、どわあああああ!!」
「旦那さん閃光玉! せんっこーだまニャッ!!」
 ビカァッ!!
 窓からオモチがぶん投げた閃光玉が眩しく弾ける。突然のフラッシュに破壊的な勢いで突進してきた暴走ポポ(農業用)も、ズザーッと土煙を上げて気絶した。
 その湾曲した牙の真ん前に、本気で涙目になっているヒューがいる。
「はー…! し、死ぬかと思った……!」
「あー素晴らしいニャ。自分で惚れ惚れしちゃうニャ。オイラってなんて有能なオトモアイルーなのかニャー」
「ホントだよ! オモチ愛してる!!」
「ニャへーーーーッ!? ぐ、ぐるじいっ」
 感動のあまり、絞め殺さんばかりにオトモを抱きしめるハンター。そろそろ村の名物と化してきた謎の寸劇を見守る住民たちの目は、今日も生暖かい。
「いつも仲が良いなあ、あの二人は……」
「そうねえ。昨日もオトモを洗濯するとかしないとかで、大喧嘩してたわねえ」
「なんだって? オトモの……、洗濯?」
 ポッケ村は今日も平和である。
 うっかり関節技をキメてしまい、クタッと伸びたオモチを見ながら何事か思案しているヒューのところへ、シシィがスキップしながらやってきた。
「わあ! オトモさん、どうしたの?」
「うん……、こいつ風呂嫌いでさ。今の内に洗濯しちまったら、やっぱ怒るかな?」
「ええっ? そんなのわかんないよ。どうしてお風呂が嫌いなの?」
「知らねー。ネコはみんな風呂が嫌いなんだとか、昨日は適当なこと言ってたぜ」
 実は意外ときれい好きなヒューは半ば本気で実行しかけたが、ふと思い出してポケットに手を突っ込んだ。
「あ、そうだ。シシィ、これやるよ」
「なあに? わあ、キレイ……!」
「ポッケクォーツって言うんだってさ」
 ひとかけらの鉱石は、先日採掘した氷結晶の中に紛れ込んでいたものである。納品のあとにギルドから弾かれて返却されてきたのだ。
 氷結晶と同様に触るとひんやり冷気を放っていても、輝きはまるで違う。厳寒の夜空に瞬く北極星のような、透き通った強い煌めきを持っていた。
「わたし聞いたことある……、持ってると幸せになれる石だって! いいの?」
「ああ。俺が持ってても使わないし。だからってわけじゃねーけど、もう二度と俺のあとを付いてこようなんて、おっそろしいことは考えないでくれよな」
「ええーっ!?」
「ええってなんだよ、ええって」
「だって」
 頬を膨らませてシシィはきょろきょろ辺りを見回し、人が見ていないことを確かめると、ヒューをちょっと手招いた。子供とは思えない周到な仕草である。
 ――そういえば、女は男より早くマセるって兄貴が言ってた気がするなあ……。
 なんとなく嫌な予感を覚えながらかがんだヒューに、シシィがこっそり耳打ちした。
「……え。えええっ!?」
「内緒だよ! 誰にも言っちゃ駄目だからね」
 花開くように笑うと、くるっと身を翻してシシィは軽やかに駆けて行った。途中で一度振り返り、大きく手を振ってからまたもやクルリと回って見せる。ぴょこぴょこ跳ねるはちみつ色の金髪を唖然としながら眺めていると、伸びていたオモチが目を覚ました。
「ハッ、なんニャ? なにがあったんニャ? ……どうしたんニャ旦那さん、ぼーっとして。ヨダレ垂れそうなイャンクックみたいな顔してるニャ」
「垂れてねえよっ、誰がイャンクックだ! じゃなくて、あのさオモチ。実はさっきシシィが……。いや、やっぱいいわ。止めとく」
「なんニャ。言いかけて途中で止めないで欲しいニャ。気持ち悪いニャ」
「何でもないって。というかだな、たぶん聞かないほうがいいと思うぜ」
 はあ?と首を傾げたオモチを放って、ヒューは遠い少女の背中を目で追った。困ったようにガシガシと頭を掻きながら。
 ――わたし、ハンターになりたい! それでお兄ちゃんと一緒に狩りに行くの!
「あいつ、ぜんぜん懲りてねーじゃねえか……。それとも俺って、子供の成長に何か悪影響与えてたりすんのかな、もしかして?」
「何言ってるニャ。わけわかるように話せってもんニャ」
 いつもながら、オモチの態度は小馬鹿にしている。ムカッときたヒューが風呂の件を蒸し返し、押し合いへしあいやっているところへザクセンが呼びに来た。
 いつかのように、ニヤリと笑んで「村長が呼んでいる、仕事だ」と。


「ほ~いほい、ハンター殿。ヒュー・パーシヴァル! ポッケ村の高名な初心者ハンター殿を見込んでヌシに依頼が来ておるよ」
「オババ。高名な初心者ハンターって、なんかおかしくねーか?」
「もちろん、可笑しいとも。冗談だからの。ひょひょひょひょ!」
「や、やめてくれって……」
 茶を飲みながらの日向ぼっこが似合う、もはや子供に返っているようなおばあさん――という、最初に会った時の印象はどうやら幻だったようだ。
 こんなに食えないバアさんだったとは。ヒューは今更ながらに冷や汗をかく。
「じゃが、ヌシにはいずれそうなって欲しいものよ。《初心者》が取れた頃にはのう。さて! 依頼はここより峠三つ越えた村落からだね。山道に凶暴なドスファンゴが陣取って、街への行き来が遮断されておるらしい」
「もしかしてソイツ、前に俺が仕留めそこなったやつかな?」
「ほ、オットーは言わなんだかの? 刀傷があるらしいで、おそらくそうだろうね」
「うっしゃ! 雪辱戦だぜ」
 鼻息荒く依頼を受けたヒューも、そのまま出発するような無謀なことはもうしない。ハンターの家へ戻る坂の途中でザクセンが待っている。手を上げてヒューは応え、二人で話し込みながら歩いて行った。狩りの段取りを相談しているのだろう。
 経験を積み、知識と慎重さを身につければ、勇猛果敢な若者は父親に勝るとも劣らない良いハンターになるだろう。剣だけでなく、そう思わせる輝くものを内側に持っている。
 ――性格は、どうやらデューラン似のようだしのう。調子に乗ったら困るから、本人には言わない、言わない。
 やがて準備万端整えてきたヒューとオモチが姿を現す。まだまだ初心者のハンターシリーズ、背中に背負った紅い双剣。気構えだけは充分に、狩りへの意欲をみなぎらせている。
 見かけた村人も集まって来て、ちょっとした見送りになった。「気をつけて」という声よりは「また崖から落ちるなよ」という茶々のほうが多いのは、人々からの信頼の証だ。
 ヒューは村の出口で歩みを止めると、ニッと振り向いて片手を上げた。
「――行ってくる!」
 そして狩人は一歩を踏み出す。
 下る坂道の先にあるのは晴れ渡った空のもと、明るい陽光の降りそそぐ森と川と、雪を戴く遥かな銀嶺。けれどヒューの眼の前に本当に途方もなく広がっているのは、たったそれだけものではない。
 そこには数多の地、数多の生命、数多の出会いが待ちうける。
 モンスターハンターの世界が――!


(おわり)
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