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モンスターハンター!1 2章

銀嶺の双剣士 2章です。


モンスターハンター! 銀嶺の双剣士


 2章 ようこそ、ポッケ村へ!

 ちちち、ちちちちち。
 ――……うるせえ……。
 先ほどから、頭上で何かが騒がしい。ひとが気持よく寝てるってのに、一体なんだってそうわめくんだ? 
「う……」
 一言文句を言ってやろうと眉間に力を込める。
 なんとかまぶたを押し上げると差し込む陽の光が眩しくて、彼は何度か瞬きをした。五感が戻って来る。身体の節々が痛い。ここは少し冷えるようだ。そしてようやくクリアになった視界いっぱいに、見えてきたそれは。
 ――とり??
「おお、目を覚ましたようだな」
「おああっ、鳥がしゃべったー!?」
 がばっと身を起こしたのに驚いて、鳥は大慌てで窓から逃げていく。それを呆然と見送る彼に呆れた調子で話しかけたのは、窓とは反対側に立っていた壮年の男であった。
「鳥が喋るわけないだろう、パーシヴァル君。それは私だ」
「え? あ?」
 がっしりした体格の陽ひに焼けたひげ面。片足が悪いのか姿勢がやや傾いでいたが、ともかくこんな知り合いは青年にはいない。妙な顔をしていると、相手は呆れ顔からニヤニヤ笑いになって言った。
「意外に察しの悪いやつだな。新任ハンターのヒュー・パーシヴァルだろう? ようこそポッケ村へ。君が雪山で倒れていたところを、私が今朝がた発見して村まで連れてきたんだ。凍死する前で良かったなあ?」
「あ、そっか」
 霞がかった頭がやっと明快になってきた。昨夜自分は何者とも知れないモンスターに襲われて、崖から滑落したのである。死んだかと思ったが目が覚めてみればすり傷程度で骨折もなく、しかも目的の村に着いている。我ながら大した強運だ。
 銀髪の頭を掻きながら、ヒューは改めて自分を救ってくれた男を見た。
「いやあ、ほんと助かったぜ。礼を言うよ」
「ふふ。待ちに待ったハンターが崖下に倒れていたのを見つけたときは、どうなることかと思ったが。大した怪我もなくて何よりだ。やっと私の後継が来たと安心していたのに、いきなり負傷されては目も当てられない」
「私の後継? じゃ、あんたがこの村の前任ハンターか」
「その通り。オットー・ザクセンだ、よろしく」
「ああ。こちらこそよろしく、先輩」
「先輩はよしてくれ。しかし、パーシヴァル君。予定通りなら三日前に村に着いているはずだったろう。あそこでずっと気絶していたわけではあるまい?」
「なはは、まっさか! それなら今頃お花畑を見てるって。三日くらい遭難してただけですよォ」
「遭難……!?」
「そーなんす、なんてねー!」
 ナハハと笑う青年をザクセンは恐ろしいものでも見るかのような目で眺めた。器がでかいのかただの馬鹿か、判断に迷うところである。
「なんというか、とても上級ハンターには見えんなぁ。まぁ、村人には親しみ安かろうが」
「えっ?」
「ともかく、本格的に寒さがぬるむ前に間に合って良かった。ギアノスどもが山を降りてくるのは、これからだからな。それに最近、山に厄介な奴がうろつくようになって……」
「ちょ、ちょっと待て」
 窓の外へ目をやり、白い山並みを眺めながらのザクセンを遮るヒュー。今何か、とてつもなく恐ろしいことを聞いたような気がする。
「あ、あのさァ。あんた、今なんてった?」
「うん? いやな、春もすぎるとギアノスどもが村の家畜や農作物を狙って」
「違う違う、その前だよ」
「その前?」
「だから! なんかさっき上級ハンターって単語が聴こえたよーな気がしたっつーかなんつーか」
「言ったが、それがどうした? 上級なんだろう、お前」
「…………」
 どこでどんな手違いがあったというのだろう。
 数瞬ののち、青い顔でヒュー・パーシヴァルは告白した。
「あのさ、俺。ハンター初心者なんですけど?」
「…………。冗談だろう?」

 * * *

 ――うまい話だと思ったんだよ。
 せまい上に田舎の村である。新しく来たハンターが初心者だという噂はあっという間に広がったらしく、家の外に出るたびにあちこちから視線を感じてヒュー・パーシヴァルは居心地が悪い。
 ――なーにが、雑魚しか出ないから安心しろ、だよ! 上級つったらティガレックスでお手玉できるくらいの腕がいるってことじゃねーか。くっそー、兄貴のやつ……、今度会ったらおぼえてろ!
 ベッドでごろごろしながらヒューは唸った。目をつむるとまぶたの裏に、彼と違って赤胴色の髪をした端正な顔立ちの男が浮かんでくる。学者みたいな丸眼鏡を軽く押し上げ、そいつは爽やかな笑顔でこう言った。
「すまないね、ヒュー。僕も向こうに借りがあるんで、今回のクエストを断るわけにはいかないのさ。ポッケ村の辺りは低級モンスターしか生息してないわりに、レアな鉱物が手に入ると聞いてる。どうだい、悪い話じゃないだろう? むしろ初心者にはそうそう無い好条件だと思うな。だからしばらく――」
 しばらく僕の代わりに行ってくれ、と。
「そこでホイホイ頷いちまった俺がっ、俺がバカだったんどえあっ!?」
 ガツッ。
 寝返りを打った途端、ヒューは思いっきり壁に頭をぶつけた。
「うおおおおいってえー…! 何だってんだチクショー、兄貴の呪いか!? これだから顔の良い男は嫌いなんだ!」
「……今のは明らかにあんたがバカなんニャー」
「んなっ、誰でああっ!?」
 ドガッ。
 今度は顔面から床に落ちたヒューの前。二本足で立っている、やわらかそうな白毛の脚が見えた。鼻の頭を赤くし、涙眼で見上げた男を馬鹿にしきった視線で見下ろしたのは、一匹のネコ族獣人・アイルーであった。
「はじめましてニャ、おばかハンター。オイラがあんたのお守を頼まれた、かわいそうなオモチだニャー」
「おっ、お守……!?」
「間違えた。オトモだニャ」
「オモ、オト、オ……オトモ!? お前、オトモアイルーか!?」
「だからさっきからそう言ってるニャ。まともにひとの話も聞いてにゃいニャア」
 肩をすくめて長いため息。あまりにもナメている。
 が、なんとヒューは全然気づいていなかった。
 ――というのも。
 直立二足歩行のネコ族獣人・アイルーは、ハンターにとっては特別な意味のある存在だ。
 人間同様、世界各地に彼らだけの部落を持つアイルーにも、人の社会に出稼ぎに来たり、人と混じって暮らす者は多い。近年、ハンターズギルドに認可された専門職で特に有名なのは、ハンターの補佐的役割を担うオトモとしての仕事である。食事の世話や狩りの手伝い、サポートされるのはハンターの側だが、オトモアイルーはハンターのステータスでもある。優秀なハンターほどアイルーの信用を得、多くのオトモを雇えるからだ。
 ――俺もとうとう一人前に……。
 一瞬ヒューは感動しかけ、はたと我に帰った。床に座り直して精一杯の威厳を保つ。ほとんど同じ高さの視線になった白ネコ・オモチの鼻先に、指をビシッと突きつけた。
「おいお前。初対面だってのに人をいきなりバカバカと、さりげなく失礼なヤツだな」
「さりげなくないニャ。露骨に失礼ニャ」
「ばっ、わかってるんなら言うんじゃねえよ! 今日から俺がお前の旦那なんだろ!?」
「オイラは上級ハンターのオトモって聞いてたニャ。話が違うのはこっちのほうニャ。初心者の、しかもこんなにおバカなハンターのオトモだなんて聞いてニャい。オセワアイルーなんてゴメンだニャ!」
「そこまで言うか!?」
 憤慨したあまりに、ヒューは指先をネコの鼻の穴に突っ込んだ。しかし二人とも頭に血が上っている。
「だったらなあ、俺だってオトモなんかいらねーっつの! 他人と一緒の狩りなんか向いてねえや! 俺は一人でスタコラーっと行ってサクサクーっと倒して帰ってくるのが好きなんでい!」
「ニャ~にでかいこと抜かしてるニャ! 初心者ハンターのくせに」
「ぐっ、誰にだって初めての時ってなァあるだろお!? だいたい、そういうお前はどうなんだよ。百戦錬磨のオトモだってのか!?」
 実はやぶれかぶれだったが、意外にもニャッと詰まった白ネコ。勝ち誇るヒュー。
 だが次のオモチの指摘には、ヒューも黙らざるを得なかった。
「要するにハンターもオトモも、ここには初心者しかいないってことだニャー。オイラ、ちゃんと村を守っていけるかどうか不安ニャ……」
「…………。だ、大丈夫だって! ハンター訓練所の期待の星だったこの俺が、トットと上級ハンターになりゃ良いだけのこったろぉ。問題な~い問題ない。ナハハハハ!」
「あんたのその楽天さだけは認めるニャ。とりあえずあんた、今朝からあんまり村に出てにゃいニャ? 田舎の村では最初の印象が大事ニャ。案内するから挨拶回りに行くニャ」
 それから、とオモチはジト目でヒューを見た。
「いい加減にオイラの鼻から指を抜くニャ。苦しいんニャけど」
「おっ、悪い」
 ポン、とやたら良い音が響いた。


(「3章 村の人々」へ続く)
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