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フルベビ紀行

ドンドルマ短編集企画にロッソ・チネリさんから寄稿作品です。ありがとうございます^^

正式にHUNTERLOGUE避難所で短編集企画としてまとめてありますが、
掲載場所は多いほうが誰かに読んでもらえるかな、という個人的判断でこちらにも残しておきます。
削除要請はツイッタのほうへよろしくお願いします <(_ _)>




 フルベビ紀行
ロッソ・チネリ著 


“伸びるよ 伸びる フルフルと
 ほっぺためがけてパックンチョ
 ながーく首を伸ばしてみれば あたしゃ、そんなに待てないよ
 ちょいとお待ちよお客さん
 噛みつく相手はおいらじゃないよ
 よくよく練って
 よくよく伸ばして
 白がいいかい? 赤がいいかい?
 どっちも欲しいときたもんだ!
 さすがは我が町ドンドルマ
 胃袋 ふところ 金冠サイズだ!
 さあさ、できたよ 持ってけメラルー
 おやまあ まるっと飲み込んで
 どっちがどっちか 分かりゃしない!”


 第一景・夏の風物詩


 カルチェのフルベビアイスはいつでも満員御礼。中央広場に屋台や呼び売り商人の姿は数あれど、暑い盛りに売り出されるこの冷たくて甘いお菓子は温暖期の風物詩だ。岩窟院の学生もギルドスタッフのお姉さんも、ドンドルマっ子なら誰でも知っている。
「とは言ってもだ。所詮コイツぁ、まがい物さ」
 ようやく並んで手に入れたフルベビアイスなのだが、目の前のハンターはちょっと皮肉そうに笑う。
「じゃあ、それも私が食べてもいいですよね?」
「まだ自分の分食べてるじゃねぇかよ」
「甘いものは別腹です」
「別に不味いって言ってるワケじゃないさ。それに経費で落ちるんだろ?」
「そりゃあ、まあ。そうですけど……」
 月刊・狩りに生きる、といえばハンターならば知らぬ者はいない雑誌なのだが、残念ながらこちらはしがないタウン誌である。
「なんて雑誌だっけ?」
「『ドンドルマなう』です」
「どこら辺のセンスだ、そのネーミングは」
「うるさいですよ。印刷所は同じなんですから」
「間借りしてるだけ、と」
「うー!」
 その昔この場所が氷河であったことを示すかのように、ドンドルマは切り立った山間に張り付くようにして存在している。歴史としてはドンドルマより新しいジォ・ワンドレオからの旅人は、まずその山道に閉口する。どうしてこんなところに人が住んでいるのか。東西貿易の要であり、いかだを組んだ水上都市の住人には今ひとつ理解できない点が多い。川を遡上してその恵を受け取ることはあれど、こんな坂道ばかりの場所には到底住む気がしないというのが大方である。
「少し下れば小さいながらも扇状地が広がってるのに、どうしてここの住人はそっちに町を作らなかったんだろうなぁ」
「あら、ハンターのクセに知らないんですか」
「何が?」
「ここはあの巨大な龍、ラオシャンロンが通るんです。そんなところに町なんか造ったらペシャンコですよ」
「ならもっと別んとこに作るとか」
「よくは知らないですけど、元々ここに町を築いた先住民がいたんだそうです。そこを大長老さんが指揮して今のドンドルマを作り上げたって、岩窟院の文献にはあります」
「なるほどねぇ。イチから作るより楽ってワケだ」
「アリーナの石組みは、その時に切り出した石からできてるそうですよ」
「さすがは『ドンドルマなう』の記者。よく知ってるじゃん」
「貴方にそう言われると複雑な気分がするんですが」
「褒め言葉は素直に受け取ろうよ。もてないよ?」
「貴方に心配されなくても大丈夫です。彼氏、いますもん」
「こんなちんちくりんな娘……ぬわっ、危ねぇ!」
 スプーンで伸ばされたアイスがハンターを仰け反らせる。
「話、続けますよ」
 困難多きドンドルマ開拓の副産物として数多くの鉱脈が発見され、今日の工房の発展に繋がっていった事は想像に難くなく。掘られた横穴や、偶然にも発見された洞穴は今でも倉庫として使われている。季節を問わず一定の温度を保つそうした洞窟はこと、食料の保存にぴったりの場所だった。
 これに目をつけたのがカルチェの初代である。
 彼は洞窟の中を氷結晶で内張りすることを考えた。雪山では一般的な氷室を再現しようと思い立ったのである。アイディアとしては珍しいものではなかったが、それを実行しようと思い立った者も稀である。なぜか。天然の洞窟であればワインセラーとしては充分だし、地下水に浸しておけば夏でも冷たい食材が楽しめる。誰も凍るほどの低温を必要としていなかったのだ。それでも彼はドンドルマに氷室が欲しかった。
「暑がりなんだな、きっと」
「アイス、没収しますよ」
「えー」
「えー、じゃないです。そういう人はアイスを食べる資格はありません」
「もう半分食べちゃったよ?」
「あとで請求しますから。大丈夫です」
「お、鬼がおる……」
「まあ確かに、料理人のこだわりと言えばそれまでなんですけど。この初代の方はどうも北国の生まれのようでして。少しはノスタルジックな気持ちがあったのかもしれません」
「おかげでここドンドルマじゃあ、他所じゃ食えないとろける様なステーキにありつけるんだけどな」
「あら。ハンターといえばこんがり肉なんじゃないんですか?」
「たまにゃ、筋張ってない肉も食いたくなるさ」
「見かけによらず、贅沢なんですね」
「一言、余計だって」
 彼がなぜ、そこまでして食材を冷やしたかったのか。本当に故郷を懐かしむ気持ちだけだったのか。ムッシュ・シエロに代表されるように、人の美味いものに対する追求は余人の計り知れない領域にまで達するのだろう。そうしたこだわりが今こうして目の前にあるフルベビアイスとなった事は、例えその成り立ちを知らなかったとしても素直に祝福したい偉業であることに間違いはない。
 温暖なドンドルマにあって夏でも溶けず、疲れた身体に染み渡る甘さ。
 たちまち町一番の名物となり、瞬く間にカルチェの名は広まったのである。
「それが皮肉なことか、その秘密を暴いていったのもハンターなんだよねぇ」
「え……。ハンターの間では周知の事実なんですか!」
「そこまで驚かんでも。アイス、落ちるぞ」
 みょーんと伸びたアイス。辛くも受け取って頬張ることに成功。
「うぐぐっ……」
「まったく面白いお嬢ちゃんだ。しょうがねぇな、ついて来なよ。特別に秘伝の知識を披露して差し上げよう」


 第二景・香りが運ぶもの


 中央広場には多くの露天が並ぶ。大衆酒場のある西側では生活雑貨や服飾を始めとする店が手ぐすねを引いて客を待ち、アリーナのある東側では食材・食品を扱う店が声を張り上げて道行く客を誘惑する。そんな坩堝のような露天市場においてドンドルマの胃袋を一手に引き受ける西区の市場はまさに雑多な物を扱っていた。
 薬草や解毒草などの野草を扱う薬草屋。その中でも食用に適した部分に特化した食材屋。ハンターの消耗品を数多く扱う調合屋。燻製を売りにしている店もあるし、薬草を含めて治療薬を作って売りに出す薬屋もある。それぞれがそれぞれのニーズに応じた素材を欲しており、同じ素材でも目的が違えば採取する産地も季節も違う。
「ハンターって人種はただ持ってくりゃいいって考えてる輩が多くて困るねぇ!」
 大きな身体を揺すりながら薬屋の女将さんが笑う。
「市場のおっかさんってのは、何だってこうも肝っ玉かねぇ……」
「そりゃあ、アンタ。商売は気力・体力・面の皮。度胸のひとつも据わってなけりゃ。おまんまの食い上げさね。冷やかしでも帰るときにゃ、毎度ありって買わせるのがあたしらの心意気ってもんよ」
「てなワケで覚悟しろよ、お嬢ちゃん」
「はい?」
「財布の中身はオーケーか? 腰は据わったか? こいつぁ狩りだぜ?」
「……なんだかよく分かりませんが、貴方を盾にする準備はできました」
「それ、酷くない?」
「おばさん、この方が私に色々買ってくれるそうです」
「あいよー。さあ、逃がさないよー!」
「女って怖えぇ……」
「それで一体、何をご所望だい。風邪薬かい、虫下しかい、それとも熱さまし?」
「万能薬さ。オルキス・マスクラの球根。あるだろ?」
「おやまあ! お連れさんは彼女かね。今夜はお楽しみなのかい」
「誤解だ」
「訂正して下さい」
「二人してまあ、息もぴったりだねぇ」
「説明、してくれますよね?」
「賢者の目でにこやかに微笑むのはマヂ勘弁して下さい……」
 薬屋の軒先に鈴なりに吊るされた干からびた球根。女難の相によって弁明苦しいハンターのために説明すると、オルキス・マスクラとは一部の地域に自生する野性蘭である。高度のある比較的乾燥した低草地帯に育ち、質の良いものを入手しようとするとそれなりに苦労するモノだ。
「最近じゃ都市部のワイン畑や果樹園にも生えてたりするけどねぇ」
「そういうやつは小さいし効能が薄い。高値にはならねぇよ」
「おやおや、よく知ってるじゃないか。さすがは殿方、お盛んだね!」
「頼む。そう誤解のある言い方はカンベン。お嬢ちゃんに睨み殺されます……」
「風邪薬、咳止め、整腸剤。食欲増進に、なんてったって飲めばたちまち元気な強壮薬だ。王都くんだりじゃあ、王侯貴族の秘中の秘。手のひら一掴みで同じ量の金と交換だなんて、まことしなやかに言われてるねぇ!」
「じー」
「……居た堪れないので許して下さい」
「オトコは尻に敷かれた方が可愛げがあるさぁね!」
「とにかく。これがカルチェの秘密だ、お嬢ちゃん」
「ほー。あんた、ちょっと見かけによらない博識ぶりじゃないか」
「その貴重さをこのお嬢ちゃんに教えてやって下さい……」
「しょうがないねぇ。ちょっと待ってなよ……」
 女将さんはおろし金を持ってきて手近な球根を擦り始める。茶色く乾燥した見た目からは想像できない、真っ白い粉末が擦り上がる。
「ほら。嗅いでみなよ」
「あ、これ……アイスの香り?」
「そいつがカルチェの秘密ってワケさ」
「あそこの旦那はねぇ、昔は薬売りだったのさ。北からやってくる行商人。旦那の故郷じゃこの粉末を飲み物として飲んでいたんだと。民間療法ってやつさね。あの屋台、寒冷期になると入れ替わりにもうひとつの名物が出るだろ?」
「フルルンドリンクですね」
 伸びるアイスが暑い温暖期の風物詩とすれば、ドンドルマの象徴である大老殿を真鍮で模ったサーバーは、寒冷期の風物詩だ。中には熱々のミルク飲料が収められていて、鼻先に近づけると薬湯のような香りがする。不思議と癒されるその香りを楽しみながら、ふうふうと冷ましながら啜れば臓腑に落ちていく甘みがすっかり寒さを吹き飛ばしてくれる。
「もしかしてフルベビアイスって、フルルンドリンクを冷やしたもの……?」
「そこを俺らが答えるワケにゃ、いかねぇな」
「そうさねー」
「ま、カルチェの名物ってのはちょっと独特の香りのする食べ物が多いだろ? シナモンとか」
「言われてみれば……そうですね、確かに」
「それが他のどんな食べ物屋台にも真似できないノウハウさ。クセになったらやめられない。見た目を楽しませ、香りで惹きつけ、味で虜にする。カルチェがこのドンドルマで繁盛する本当の理由は、商売上の秘密だけじゃないのさ」


 第三景・恵みの味、狩りの季節


「はぁ……」
「太るの気にしてんのか。お嬢ちゃんはもっと食ったほうがいいぞ。ただでさえちんちくりん……」
「ワザと言ってます?」
「み、みょーん」
「とぼけても駄目ですよ。まったく」
 広場に戻り、本日二度目のフルベビタイムである。売り口上に釣られてついつい財布の紐が緩む。暑くて開放的になっているせいだと思いたい。
「んじゃ、なんだよ」
「結局分からずじまいだったってことですよ。あなたの言ったことが」
「俺、何か言ったっけ?」
「このアイスはまがい物だって話です。忘れたんですか?」
「その話ね……どうしてもって言うなら話してやらないこともない」
「貴方にしては歯切れが悪いですね」
「覚悟して聞けよ……」
 そもそもフルベビアイスなる名前の由来は何か。
「見た目が似てるからじゃないですか?」
 みょーんと伸びるアイス。
「そうあって欲しいなとハンターは思うワケよ」
 負けじとみょみょーんと伸びるアイス。
「お嬢ちゃんはフルフル見たことある?」
「岩窟院のスケッチなら。あんな気味の悪いモンスターもいるんですね」
「そうそう。目がないのに口だけは立派でな。ギザギザの歯を剥き出してこっちに噛み付いてきやがる。イマイチ何考えてるのか読めなくて苦労する上に、的確にハンターを追いかけてくるんだから、そりゃビビるぜ」
「獲物を丸呑みにするって聞きましたけど……」
「ああ。このアイスみたいに首を伸ばしてな。あいつを狩るときは頭上に注意だ。後ろを振り返ると仲間がいない……なんてホラーなことになる」
「嫌ですね」
「ああ。あれは堪らん」
「その子供みたいだからフルベビアイス、と」
「残念。みたいではなく、子供そっくりなんだな」
 モンスターの生態については謎の部分が多いが、その多くが卵生であるということは知られている。フルフルもまた卵生であり、産みつけた卵はときおり沼地や雪山などで発見される。どういう原理かは知らないが、そばに近づく生体に反応して孵化を早めるらしい。産卵場に気づかずに採掘や採取に勤しむハンターが、ふと気がついたら孵化したばかりのフルフルベビーを腕にぶら下げていたということが稀にある。親に似て目は無く歯の生え揃った口だけのプニプニした白い塊。ぴちぴちと振られる尻尾は無邪気で、ちぃちぃと鳴くその姿は愛らしい……人によっては。
「みょ、みょーん……」
「気持ちは分かるが食べ物で遊ぶなよ」
「うー」
「だからまあ、そいつを手持ちのマカ壷に放り込んだって悪気はなかったんだよ。きっと」
「マカ壷って。マカ麹で発酵させるあのマカ壷ですか?」
「そう。竜人族に伝わる秘伝の発酵食品な。好きなやつは堪らなく好きで狩場に持っていく奴もいる。いや、まさかあんなことになるとはなー」
「貴方なんですか?」
「もう衝動的にぶち込んだんだけどな。気持ち悪くて。でもこれどうすっかなと冷静に考えてみた。お前さんならこの蓋開けようと思うか?」
「思いません」
「だろ。それで普段からイラッと……じゃないお世話になっている山菜ジジのところに持っていくことにした。ジジならなんとかしてくれるだろう、と」
「悪意が透けて見えますよ」
「善意だって、ホント。そもそもマカ漬けは竜人族の食文化だ。フルフルベビーの一匹や二匹、入れたことがあるはずだ……たぶん」
「嘘くさいですね……」
「まあ聞けって。それで俺は、いつものように氷結晶の採取を巧妙に邪魔してくれるジジのところへそいつを持っていった。そしたらな、小脇に抱えたマカ壷を見るや、ジジの奴が見たこともない嬉々とした表情で手を出すじゃないか。この波に乗り遅れてはと俺は愛想よくその壷を差し出した。いままでこれほどまでに気持ちのよいトッテオキ交換があっただろうか。いやない」
 ジジはいつにない喜びに溢れた動作で背負った籠を開けた。歯切れのよい掛け声と共にハンターに手渡されたものはなにやら冷たい物体。つい先ほど腕に食いついていた物体によく似た、白くて目が無くてプニプニした感じの……どうやら食べ物らしい。
「気分一転、俺はフルフルに丸呑みされた気持ちで一杯だったよ。ドン引きだ、そうドン引き。山菜ジジはすでに俺のことなどアウト・オブ・眼中。ベビーの入ったマカ壷を大事そうに抱えながらその蓋を撫でさする。立ち尽くす俺を見上げるジジ。杖で追い払われるかと思いきや、これまた見たことも無い顔で笑いやがった。もう恐怖だ。ホラーだ。ニヨニヨしている山菜ジジなど山菜ジジじゃねぇ。俺はもう何がなんだか分からなくなって駆け出していた。この恐怖がお嬢ちゃんに分かるか?」
「いえ。さっぱり」
「くっ……ま、まあいい。ベースキャンプに戻った俺は、いまだ手に握り締めている物体に気がついた。そう。俺の腕に食いついていたフルフルベビーによく似た食べ物だ。あの時、俺はきっと正気じゃなかったんだろう。全力で走った身体は渇きを覚え、瑞々しいその食べ物を欲していた。腰に下げた水袋の存在を忘れ、俺はおもむろにそいつを口に運んだ。そう、俺はハンターだ。食われてなるものか。食うのは俺だ、と」
「食べたんですね」
「ああ。食べた。一心不乱にな。何かに取り憑かれるように。食いついては伸びてくるそいつを、食って食って食いまくった。頭がキーンとした。構うものか。この世から消えてなくなれ。こんな美味いもの、人に渡してなるものか……」
「……はいっ?」
「いやー。ほのかに香るマカ麹の発酵臭。これがまた食欲をそそって止まらない。この世にこんな美味いものがあったものかと感動したね。それからというもの雪山に行くときはトッテオキ目当てにマカ壷を常備さ。この話、お嬢ちゃんだから教えるんだぜ」
「そ、それはどうも……光栄です」
「とまあ、カルチェのアイスがまがい物だって理由。分かったか?」
「貴方が正真正銘のド変態だってことがよく分かりました」
「なんですと!」
「冗談です。そんな悲嘆に暮れた顔しないで下さいよ」
「ったく……。最後までお嬢ちゃんには振りまわされっぱなしだぜ」
「たまにはこんな休日もいいんじゃないですか?」
「まあな」

 ドンドルマは温暖期の風物詩、カルチェのフルベビアイス。
 そしてその元になったといわれる山菜ジジのフルベビアイス。

“……似て非なるふたつの食べ物に共通するものこそ、狩猟都市ドンドルマを象徴するモノに他ならない。小さな私をその影で覆うように立ち上がり伸びをする男。温暖期の日差しを浴びて逆光がその輪郭を彩る。自然の恵みを届けるハンターたち。その活力こそがこの都市の力であり、彼らの働きこそがこの町の繁栄である。偉大なる開拓者たち。彼らによって切り開かれた道を人々は歩む。迷うことはない。ハンターがいる限りヒトは自然と共存できる。その豊かな恵みはこうして露天の名物ひとつ取ってみても等しくもたらされているのだ……”
「最後に。こちらの取材に協力を惜しまず尽力してくれたひとりの名もなきハンターに幸多くあらんことを。珍味に飽きたらまたドンドルマのフルベビアイスを食べに来て欲しい。カルチェは今日も満員御礼です」
「なに読んでんだ?」
 波間に揺られながら双剣使いが冊子から目を上げる。
「『ドンドルマなう』だ」
「すごいセンスだな」
「だろ。でもまあそれなりに暇つぶしになるぜ。読むか?」
「あとでな」
 道具に背を預けてガンランス使いの連れは昼寝を決め込むらしい。双剣使いは再び記事に目を落とす。
「しょうがねぇな。狩りが終わったらまた遊びに行ってやるよ。お嬢ちゃん」
 ジォ・ワンドレオから砂漠への道行き。帰る頃にはフルベビアイスが恋しくなる。その時には熱帯イチゴでも手土産に持っていこう。
 帆をはらむ風は心地よく。
 船べりを揺らす波は今日も穏やかだ。
 身体に馴染んだゆりかごのようなゆらぎに身を任せながら、いつしか双剣使いもまどろみに落ちていく。まぶたに遠くドンドルマを思いながら。
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コメント

『フルベビ紀行』の仮掲載ありがとうございます。
どこぞでも言いましたが、こうして体裁が整うと良く見えますなw
避難板への投稿、他作家さんの作品取り纏めもあるかと思いますがよろしくお願いします~^^

この頃はツイッターやらメールやら色々と手段があって迷うわけですが。
やはりキチンとブログ上で返信するのが落ち着くかなと。
コメも含めてブログの味かなぁと思っていたり。

掲載からしばらく経った所でネタバレ。
当初、ドンドルマ=トルコアイスと知りませんでした!(爆
「ドンドルマかー。ドンドルマ、ドンドルマ言うけどドンドルマのこと大老殿しか知らないなー。MHF始めた時、丁度リニューアルでドンドルマ無くなってたし・・・orz」ということでグーグル先生のお世話に。そして出てきたトルコアイス。ああ、なるほどなと。

フルベビアイスってトルコアイスなのかー、と。
なるほど長く伸びるアイスとフルフルの首が似てるなぁ。そういうワケなのね。

そこからトルコアイス探訪ですよ。
ドンドルマそっちのけで^^;
アイスの概略から始まってあの粘りの秘密。その原料である野生ランの自生域。そこから飛んで地質と農作物の関係。そして戻ってドンドルマの地形に落ち着いてから、MH世界地図を見渡して。再びトルコアイスを作ろうのコーナーへ。簡単クッキングで納豆のねばねば使用とか、餅を使うとか、紆余曲折を経てお菓子屋さんのアイスと山菜ジジのアイスの骨子ができたというワケです。
久しぶりに資料を漁りました。
たぶん『星鉄』の製鉄、刀鍛冶について調べた以来でしょうかw
普段どれだけズボラに物を書いているかが分かります・・・orz

物語的にはマカ壷発酵ネタと、トルコアイス本来の秘密とどちらをオチにするかで右往左往。
マカ壷~はお分かりの通り、納豆ねばねばが元ネタとなっております。
起承転まで書いて全面書き直ししたのは今回が初めてですw

ノリと勢いで始まった今回の企画ですが。
参加して本当によかったなと思いました。
ツイッターを始めた事やそれに応じてコミュの幅が広がったこともそうですが、趣味の分野で仲間とワイワイお祭りのように楽しめたのが良かった。銀貨さんの目が@@とテンション上がったらまた面白そうな企画が出てきそうで期待大。波に乗れそうなときにはオトモしますよ~^^
  • 2013-06-25│21:07 |
  • ロッソ・チネリ URL│
  • [edit]
ロッソさん、アンソロGへの参加ありがとうございまーす。
避難所へは7月に上げますので、どうぞお楽しみに^^

手軽なのが良いところですが、当事者やフォロワーにしか作品周辺の話題や空気が伝わらないのが
ツイッタの閉じてるところですよね。
その点、ブログコメントは確かに閲覧者には親切というか、
コメントだけで充分にコンテンツとしての価値があります。

トルコアイス。私は愛知万博で食べましたw
売ってたトルコ人がお茶目なおっちゃんで、アイスを差し出すと思いきや
クルッと天地を逆さに返しやがりまして。
うわあッ と本気で驚いたら、ものすごく喜んでくれた思い出。
いや、びっくりしたw 落ちないんですよ、あれ。粘性高いから。

で、そうか……オルキス・マスクラというのは、トルコアイスの原材料でしたか!
すみません、そこまではフォローしなかった。なんだか変わった固有名詞が
出てきているなと思ったのだった;(ggれ
ということがあるから、後書きってけっこう大切ですな!
小説を書くとき、本人はいろいろ調べるけど、まぁなかなか自分では解説しませんし、
でもやっぱ解説があったほうが話の背景や苦労がわかって面白いなあと、
同じく物書きしてる私は思いました。読み専の人々にとってはどうなのだろう。

起承転で書き直しとは、お疲れ様です……ツイッタで苦労しておりましたねw
自分は一度流れを作ってしまうと、修正するのがすごくハードになるほうで。
頭のリセットがきかないというか。
修正前の文章がどんなものだったかは分かりませんが、本物のフルベビアイスが
オチに来ることで、MH二次作品として綺麗にまとまったんじゃないかなぁと推測。
トルコアイスの秘密は現実世界の話ですが、フルベビアイスはゲーム世界の話なので、
このお話は、きちっとMHの物語なのだな、と。

避難所ID取得したらPASS含めてお知らせするので、また書きたくなったら
小ネタでも没ネタでもUPしてよろしいのですよ、フフフフフ
とはいえ、そうか、むしろ新しい企画を打ち立てたほうが面白いのかな。
そうだなぁ。作品数の少なさと流行りを考えると次はトライやP3やMH4だろう。
パッと出てきたのは――ユクモ村観光案内企画。
ま、それはまたいつかのお話ということで……w
  • 2013-06-27│21:54 |
  • 銀貨 URL│
  • [edit]

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