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MH3 tri- 欠片文

久々にモガの海に潜ってきたらやっぱり面白くて、無駄に文章かいてみた。


 MH3tri- 欠片文

 島の西寄りに走る水路をとおり、南の入り江へと抜ける路が、カナロアは好きだった。
 小さな滝の落ちるアプトノスたちの水場から、水路は始まっている。浅く広がっていた淡水の水たまりは、南へ下るにつれて、海からの塩水と混じる。汽水域にはジャギィたちがよく群れている。路はその先で急激に狭くなり、両脇を崖に挟まれて、南へくねくねと続いていく。そこは竜たちもおらず、静かで不思議な場所だ。
 黒っぽい岩壁は、よく見ると大昔の遺跡らしい。人が住んでいた住居か神殿のようで、あちこちに窓と思しき穴や通路がとおっている。その穴と、壁に挟まれた青空から白い陽光と水しぶきが絶えず降り注ぐので、狭くとも明るい光に満ちた美しい秘密の小路だった。風と水が穏やかな日には、静止した水面に周囲の遺跡が映ったりする。水の下にまた別の世界があるようで、そういうときカナロアは長いあいだ一人で足元の鏡面世界を眺めたりした。
 南の入り江へたどりつくと、路はふいに開ける。両側の岩壁が扇状に広がり、眩しく白熱した太陽の光が一気に訪問者の眼を焼くのだ。視界が回復する前に、風が正面から吹いてくる。強く鮮やかな潮の香り。空よりもいっそう青い海に、手招きするようなさざ波を眼にすると、カナロアはいつも一直線に走っていって、カーブを描いて海に飛び込んだ。
 ときには危険なルドロスたちが入り江に寝そべっていることもあるが、カナロアがやってくると、彼らは気分の良い休息の座をモガの主に明け渡す。心配せずとも、ルドロスたちは他にも日光浴できる場所を知っているから、カナロアも遠慮はしなかった。草食竜のエピオスも、カナロアを眼にすると距離を取る。けれど入り江から姿を消すことはせず、ひと泳ぎして岩場に寝転がったカナロアを、興味深そうに遠くから見ていることが多かった。
 村のために、エピオスを狩猟する日もある。そういうときはエピオスにもわかるらしく、さっさと逃げてしまい、カナロアも一苦労なのだが、こちらに狩るつもりがないとわかるときはのんびり海草を食んでいたりした。
 狩猟のときとそうでないときの区別がつけられるように、カナロアは森で振る舞っている。本当は不意打ちのほうが狩りの成功率は高く、動物たちのなかにも、そういう狩りをする肉食竜はいる。
 以前、一頭のジャギィが、ケルビの前で奇妙な仕草をしているのを見たことがある。そのジャギィは異様な狂乱状態で、むちゃくちゃに飛んだり跳ねたり、のたうちまわったりしていた。普段なら肉食竜の姿を見かけただけで逃げるケルビも、ジャギィの異常な行動が理解できなかったのか、釘づけで、竜が徐々に距離を詰めていることに気付いていなかった。ほとんど手を伸ばせば届く位置まで近づいたとき、突然ジャギィはケルビのほうを向き、ひと咬みで獲物を仕留めた。そして何事もなかったように巣へと帰っていった。木陰で見ていたカナロアは本当に感心したものだ。獲物の油断をさそう、見事な狩りだった。
 だから南の入り江で、休憩とみせかけてエピオスを狩る、ということもカナロアにはできたのだが、今までやったことはない。これからも、するつもりはない。それを続ければ、エピオスはルドロス同様、カナロアの姿を見ただけで逃げるようになってしまうかもしれない。それはそれで狩りにくいし、少し寂しかった。
 ――人間は奇妙な生き物だ。
 岩に腰掛け、足を海に濡らしながらカナロアは思った。
 ただの食糧として狩っている竜たち、言葉もなく、感情もわからず、どんなふうに世界を認識しているのかまったくわからない者たちを相手に、親しみを覚えたりする。勝手な親しみだと思う。エピオスにとって、カナロアは天敵だ。彼らはカナロアを当然好かない。
 けれど時どき好奇心の旺盛なやつがいて、まるで肝試しのようにカナロアにちょっかいを出す若い個体や、波間から興味深そうにずっとこちらを眺めているものがいる。そういう竜と眼が合うと、なにか心が通じたような気がして、カナロアは不思議と嬉しくなるのだ。
 ――だが、どんな心が通じたというんだろう。
 同じ生き物としての連帯感だろうか。同じ島に生きるもの、同じ時を生きるもの。それとも、おれがここにいて、おまえがここにいる、互いの存在を確かめあった安心感だろうか。
 ――おれは孤独ではない、と?
 おれは虚構ではない。現実か幻かもわからないこの世界において、他者の魂に触れることで、おれは、おれが確かにここにいると信じられる、と。
 ――そうだとしたら、本当に勝手だな。
 カナロアは足を蹴りあげ、飛沫をとばした。すぐそばにいた小魚が驚いて散る。
 竜は、そんなことは思っていないだろう。過酷な自然のなかで、自分の存在が嘘か本当かなどと悩む暇はない。必要もない。そこまで自然は甘くない。考えている間に、捕食者に喰われるからだ。
「甘ちゃんなのは、おれか」
 気落ちして、カナロアは腰をあげた。その動きに反応したかのように、波間からエピオスの頭がひょっこり現れ、カナロアと眼をあわせた。
「なあ。おまえは何を考えてる?」
呼びかけると、エピオスは黒く濡れた瞳でじっとカナロアを見つめ、しばらくして波の下に消えた。
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コメント

コメントを書くのが物凄く遅くなりました(汗)
こんにちは。Senritsuです。

今回は不思議な感覚で、新鮮な感性を頂きました(笑)

人はモンスターの意識の領域に決して介入はできなくても
こう、モンスターが主人公を「ヒト」という「ハンター」とは切り離した扱いをしているからこその
あの距離、考え方なのかなあ、と……

……全然言葉が足りていないですね。はい←

楽しく読ませてもらいました。

それでは、また。
  • 2012-08-19│09:04 |
  • Senritsu URL│
  • [edit]
Senritsuさん、こんにちは!

今回は、MH3で書けそうな物語の構成が私の中にありまして、
そのネタの一つとして書いてみた短文でした。

モンスターには感情があるのか? どんな色彩が見えているのか?
何が聞こえているのか? どんなふうに、世界を認識しているのか。

人はモンスターの意識の領域に介入できない… きっとその通りで、本当に感覚的なところは自分がモンスターになってみなきゃ分からないのかも……。
しかし人間社会を独り離れて、彼ら同様自然の中で暮らし、彼らと関係しながら生きるハンターなら、もっと別の意見を持っているかもしれない、とかなんとか。

私の場合、実際の動物に対しても同じ疑問を抱くので、こんな短文になったのでした。
イルカにとって人間とは何だろう?

コメント、ありがとうございます^^
記事の古さ・新しさに関係なく、コメントがつくと管理画面でわかりますので、お好きなときに、もしSenritsuさんが何ぞ物申したい記事がありましたら、またお気軽にどうぞ!
  • 2012-08-22│11:29 |
  • 銀貨 URL│
  • [edit]
ホモ・アクアリウス。

聞きなれないこの言葉は“人魚”に対する学説上の名詞。
映画監督として有名な岩井俊二の書いた小説『ウォーレスの人魚』のキーワードでもあります。
四足歩行のサル類がいかにして二足歩行のヒト類となったのか。
骨格、呼吸器官、体毛……。
サルが脱ぎ捨て、ヒトが獲得したその特長の多くが“水中生活”を経る事によって得られたことを示す、進化のミッシングリンク。ダーウィンよりも早く進化論に行き着き、ダーウィンの名に存在を忘れられた学者・ウォーレスが残したもう一つの進化論。

銀貨さんがモガの海に潜ったのと同様に、この夏、私は人魚のいる海に潜っておりました。
乱読するよりひとつの本を多読することが多いので、この海に潜るのも何度目かになりますが。小説内の時間軸に現在が追いついてなお、新鮮な印象を与えてくれました。
映画監督としては雰囲気や印象を求めるあまりに物語をぶん投げてしまう感のある岩井さんですが、小説では存分にストーリーも楽しめます。この辺り、アニメ監督の押井守さんと良く似た傾向がありますね。きっと二人とも往年のフランス映画が好きなんじゃないかと思われます。

時間は移り、盆休み。
伊豆は下田の町へと転勤と相成った友人を訪ねて、観光がてらに遊びに行きました。
某アニメの舞台になったとかで、町おこしがてら二次萌えした人やら物やら、名所やらありましたがw
図らずも海にちなんだ出来事が二つ重なり、夜に運河から聞こえる潮風を聞きながら、ふと銀貨さんの記事を思い出してコメをしたため、したため。
そんなことより小説書けよ、という心のツッコミを黙殺しつつ。
まだ暑い日が続きますねとお茶を濁してみたり。

銀貨さんの海に癒された夏の一日でございました。
(長文スマヌ・・・orz)
  • 2012-08-23│03:52 |
  • ロッソ・チネリ URL│
  • [edit]
ロッソさん、こんにちは!
どうお返事しようかなぁ、わくわく、とやってるうちに遅くなりまして
申し訳なし……<(_ _)>

ホモ・ファーベルとかルーデンスなんてのは聞いたことあったのですが、アクアリウスは初耳です。なにか語感だけで浪漫あふれるところ、それが人類進化の仮説だとは。
進化に関わるトンデモ説というと、有機物か微生物を宇宙人が地球に撒いて行ったという「意図的パンスペルミア説」(by F.クリック)を最近知って面白がっていたところでした。
ウォーレスの説も、想像するには魅力的すぎる話ですね……。

我々はどこから来て、どこへ行くのか、我々は何者か。
科学や文学やetc、人間は色んな方向から取り組んでいるこの問題、私は特にSF的アプローチに弱いようで、早速『ウォーレスの人魚』、ggりましたw あらすじを読むとますます興味が湧いた所存。今はまっているSF作家、ジェイムズ・ティプトリー・Jr作品の制覇とどちらを先にすべきか、ちょっと悩んでおります。
むむ……、やはり海に潜るのは暑いうちかなぁw

『ウォーレスの人魚』も含め、岩井監督という名前、初めて知りました。
そういえば押井守作品も、攻殻機動隊を見たいと思いつつ、結局見てないんですよね……。
海で映画でフランス産といえば、『グラン・ブルー』がありましたが、あれも途中までしか見ていなかったな……攻殻とあわせ、この機に観たくなってきたぞ、と。

そして下田の海とは、うらやましいです。こちらMH3で潜ってるとはいえ所詮ゲーム。
実体験に勝るものはなし。下田には十年以上前に行ったことがありますが、自然にあふれた素敵なところだった記憶があります。
良いこやしにして、小説に活かしてください……ううっ、人気のない海山川に行きたい。

コメントありがとうございました^^
いや、短文にも長文で返す人間なので長文大歓迎です(真顔
ぜひまたどうぞ~って私も小説の続きを書かねば記事ができぬ……
ま、まだまだ残暑キビシイですね! 熱中症等にはじゅうぶんお気をつけて!
  • 2012-08-26│10:12 |
  • 銀貨 URL│
  • [edit]

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