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エスコンX雑文

エスコンXが面白かったので熱いうちに雑文など。
グリフィス1の名前・設定とグリフィス隊一名捏造。


 エースコンバットX 偽りの空

 ▼ mission3:Prelude

「グリフィス1、グリフィス1。こちらクラックス」
「クラックス。こちらグリフィス1、どうぞ」
「地上部隊の斥候からの情報ですが、どうやら港だけでなく街中にも地対空ミサイルSAMが多数配備されている様子です。射程距離不明、少なくとも十五基。街上空の通過は危険かと思われます。……迂回したほうが良いのではないでしょうか、隊長サー?」
「ネガティヴ。今から街を迂回すれば敵に腹を見せることになる。戦場は海の上だ、問題ない。それから今は作戦中だ。コールサインで呼べ、クラックス。敬語もやめろ。時間の無駄だ」
了解したラジャー、隊……グリフィス1。今回は敵もプナ基地を失って警戒しているようなので、反撃は相当のものになることが予想される。……注意してください」
 気弱な新人通信士の無線が、尻すぼみに切れた。
 キャノピー越しの空は穏やかな晴天、視程は良好だった。F-4ファントムⅡの両翼に一機ずつの僚機を従え、コールサイン《グリフィス1》ことオーレリア空軍大尉アレクシス・アラスは、地上から一万三千フィート上空をパターソン港目指して飛行していた。
 レサス軍が占領し、彼らの重要な補給路となっているパターソン港奪還計画。
 沿岸に集結しつつあるという貨物船を含めた敵護送艦隊の規模を考えれば、戦闘機たった三機と、かき集めたオーレリア陸軍の残存部隊だけではかなり望み薄の、まさに細い綱の上を渡るような危険な作戦だった。
 ――だが、もう後には退けない。
 戦略物資を得んがため、アラスたちは先だってプナ基地を襲撃、敵からの奪還に成功している。オーレリア空軍の生き残りが反撃の狼煙を上げたことは、すでにレサス首脳部には伝わっているだろう。小バエと思って油断してくれるなら有難いが、それは楽観的すぎるに違いない。レサス軍は、軍事施設も持たぬ一般の町をも無差別に爆撃し、たかが辺境の小さな基地を制圧するため、あのSWBMまで撃ちこんできた狂気の軍だ。こちらの動きを敵に捕捉される以前に行動する――機動の鋭さだけが勝利へのたった一つの解であると、出撃前のブリーフィングでもアラスは仲間たちに言っていた。
 それでも、やはり無謀な作戦だった。
 ――これでよかったのか。本当に、これで正しかったのか。
 くそったれバスタード、迷っていると死を呼ぶぞ。半年前なら、アラスは口汚く自分を罵ったことだろう。けれど彼にはもうできない。アラスの自信は、オーブリー基地のグリフィス隊が初めてレサス空軍と戦った日、基地上空で彼の部下とともに粉々に砕け散ってしまった。彼が率いた四人の部下のうち生き残ったのは、今ファントムⅡの右翼に追従するグリフィス5だけだった。


「田舎で頭を冷やしてこい。お前に一隊をやる。チームを組んで飛ぶとはどういうことか、自分で学んでこい」
 下された航空指令書を破り捨てたい衝動を最後の忍耐でこらえ、アラスがサチャナ空軍基地の上官室を後にしたのは一年ほど前のことだ。
 戦闘機パイロットに求められる自制心と判断力の欠如――そう評価され、国でも辺境のオーブリー空軍基地に飛ばされた。この事実上の懲罰が、自分にとって幸運だったのか不運だったのか、アラスには今でもわからない。
 あまりにも唐突に、あまりにも迅速に――2020年10月、南オーシア大陸南端に位置するオーレリア連邦共和国は、その国土を隣国レサス民主共和国にわずか十日間で蹂躙された。国内最大の規模を持ち、オーレリア空軍の核であったサチャナ基地は、当然ながら真っ先にレサスの誇る空中要塞の攻撃を受け、多くの精鋭パイロットたちがあのSWBMの前に戦闘機ごと一瞬にして大気中の粉塵と化したという。
 そして国の北部、レサス国境から遠くない首都グリスウォールもほどなく陥落。命令系統を失い、各地で孤立した軍事施設は、まるで地図上の小さなシミをひとつひとつ消すように、あっけなく叩き潰されていった。国内基地でただひとつ残されたオーブリー基地は国土の最西端、つまりは世界の最果てにあり、本来の主任務が海上防衛にあるという戦略的価値の低さから、レサス軍はその制圧をもっとも後回しにしたようだった。
 侵略のさなか、祖国とは何か、とアラスは何度自分に問いかけただろう。
 世界の中心からは少し遠く、資源に恵まれたオーレリアは豊かで平和な国だった。先の大戦でも徹底して中立を守り、軍部はいつ戦争に巻き込まれても万全の状態であるよう常に緊張はしていたが、結局戦争には至らなかった。
 空軍飛行訓練学校を出、アラスが戦闘機を一機任された頃には、世情は一応の安定を見せつつあり、国々は復興への道を歩みだそうとしていた。戦地へ赴き、果敢に闘って敵を撃ち落とす――戦闘機乗りとはそうあるべきで、エースパイロットになりたいと強く願っていたアラスは時代に生まれ遅れたのだ。操縦士としての天性の資質が若いプライドを蛮勇に育てあげ、退屈な訓練や演習で、アラスは禁止された危険なアクロバット飛行を再三繰り返した。彼はサチャナを追いだされた。
 ――他国へ出ようと思っていた。この空で最高のパイロットになれないのなら。
 祖国とは、自分の魂の帰る場所なのだろうとアラスは思った。
 空は地上のどこにいても青く、太陽は同じように輝いている。けれど、やはり故郷の空と他国の空は違うのだ。
 アラスの魂とオーレリアの空は、見えない絆で結ばれている。それは親と子の絆に似ている。自分の力では、どうにもできない絆だ。否定も肯定もできない。自分が生きているかぎり魂の最奥に刻み込まれている、ある意味では呪いのようなものである。
 ――オーレリアが恋しい。つまらなくて退屈で、平和なオーレリアが。
「取り戻そう、オーレリアの空を。我々の手に」
 ついにオーブリーまで侵攻してきたレサス軍に対し、そうして決行されたアラスのグリフィス隊による迎撃作戦はしかし、隊五機のうち三機が撃墜。隊員二名が即死、一名が射出ベイルアウト失敗による死亡という無残な敗北に終わっていた。
 今でも耳に蘇る。そして一生忘れることはないだろう。爆撃機の撃墜に成功し、はしゃぐ部下たちの歓声が次の瞬間怒号と悲鳴に変わった騒乱を。
 計器レーダー上ではなく、アラスは実際にその眼で見ていた。傾いた青空、見えない衝撃波に砕かれ爆発炎上したリックとロイの機体。片翼をもぎ取られたフレッドの機体が、積雪の白い山嶺へ黒煙を吐きながらきりもみで墜ちていく――その先に一瞬だけ見えた、空に浮かぶ巨大な漆黒の怪物。
 空中要塞グレイプニル。それはオーレリアを十日で征服したレサスの軍事科学技術の結晶、超大型戦略飛行艇だった。衝撃波弾頭ミサイルSWBMという死神の鎌を容赦なく振り降ろし、グリフィス隊をなぎ払ったあと、身にまとった光学迷彩システムで亡霊のように空に溶けこみ姿を消した。
 ――俺の訓練が足りなかっただろうか……。
 そして、アラスはあの日から毎晩考え続けている。
 この一年、片田舎の基地への配属に拗ね、がむしゃらに空を暴れまわるような無理な飛行訓練しかしていなかったのだ。もし、部下たちの質問や疑問にもっと丁寧に答えてやっていれば。もっと熱心に飛行技術を伝えていれば。
 ――みんな死なずに済んだだろうか。
「グリフィス1、こちらバーグマン少佐。聞こえるか?」
 割れるような無線が入った。よく鍛えた軍人の性として、アラスの意識は瞬時に現実へと戻った。
「バーグマン少佐。こちらグリフィス1、どうぞ」
「君がグリフィス1か。私は地上部隊を指揮するバーグマンだ。情報は行っていると思うが、敵艦隊には揚陸艦も含まれている。我々の戦力では陸戦隊に上陸されると太刀打ちできん。湾内に三隻以上の揚陸艦が入らないようにしてくれ」
「了解、揚陸艦を優先して攻撃する。……だがこちらも三機しかいない。なるべく早い港の制圧を頼みたい」
「わかっている。兵たちも、電光石火でプナ基地を取り戻した南十字星の話には奮い立っているのだ。私も君と同様命をかけて戦おう。グリフィス1、一緒にパターソン港を取り戻そう」
 空とは異なる強い青色が視界に入ってきた。
 パターソン湾。今はレサスに占拠された、オーレリアの石油化学工業地域だ。
 周波数を合わせ、レサスの無線を傍受すると呑気な交信が聞こえてきた。こちらにはまだ気付いていない。だが艦隊はすでに港の手前まで迫っているらしい。
「グリフィス5、アクイラ2。このまま真正面から一気に湾まで突き抜けるぞ。私にぴったりついてこい」
 二機からそれぞれ短い了解が返る。死ぬな、とは言えなかった。
 轟音すら追い抜いて街上空を航過する。今更あわてふためく敵の無線。賽は投げられた。あとは激しく闘うしかない。
 アラスはミサイル誘導システムのスイッチを入れ、操縦桿を握りしめた。隊をなして航行している敵補給艦、貨物船、揚陸艦を目視。機首を下げ、微塵のためらいもなく急降下する。混乱する揚陸艦に照準の赤い輝点がぴたりと定まり、戦闘の白熱に埋没しつつあるアラスの耳へ、鋭い電子音がロックオンを告げた。

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