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MHP3 序章

P3rdのOPムービーを文章化。自分のメモ用です。



 モンスターハンター P3rd 序章

 雨が降っている。
 雲は低い。粒子の細かい優しい雨だ。時折り吹く風に押されて水滴は紗幕をつくり、路をゆく旅人を柔らかく包み隠しては、肌を撫でるような余韻を残して流れ流れ、そして再び大気へ静かに霧散していくのだった。
 肌寒くは、ある。なぜならここは山道だから。
 険峻な峰々だ。山というより、岩の群れか。いくつもの巨大な奇巌が剣や棍のように突き出し、鮮やかに色づいた森の一部を頭や肩に飾りつけて、奇怪で美しい独特の景観を造りだしている。
 縫うように続く路は狭い。時に両壁は旅人を圧してそそり立ち、時に行く手をさえぎるいわおを貫き続く。一歩でも踏み誤れば、垂直に切り取られた片手側からはるかな谷底へ転げ落ちるしかない山道だ。いかほどの労苦のもとに、先人たちはこの路を造りあげたものか……。一人ゆく旅人は歩みを止め、もはや秘境とも呼べる山奥の雨の匂いを呼吸した。
 赤いもみじの葉が、かすかに揺れた。
 旅人は耳を澄ます。何かが近付いてくる音。足音。二本の足。そして木の車輪。
 内側に淡い光を宿す背後の霧から、やがて現れたのは丸鳥の牽く荷車だった。旅人に気がつくと、御者の獣人は車を止めてにゃあにゃあと言う。狩人さん。村へ行くなら、後ろへ乗っていくといい。
 旅人はありがたく言葉に従うことにした。
 背負った得物と旅の荷を無造作に荷台へと放る。追いかけて跳び乗った身軽な所作に疲労はない。歩くこと、走ること、そして戦うことには慣れている。なぜなら旅人は狩人だから。
 雨は降り続く。
 車の揺れに時どき小さく跳ねながら、荷台の狩人は笠を少し持ちあげた。
 振動のたびに、紐の切れた数珠玉のごとく縁から雨滴がこぼれ落ちる。結構な速度で走っているのだ。絶壁の道を、御者はずいぶん慣れているらしい。
 折角あつらえてもらった新しい衣装も、ずぶ濡れになってしまったな……。自然の気まぐれはいつものことだが、狩人も今回ばかりは天を恨んだ。行く先の村から歓迎の証に送られた見事な着物だったのだ。強まる雨足にしとどに冷たい。
 空はいっそう暗い。この季節この時刻に大荒れになるなどは、耳にしない話だった。山の天候は測りがたいということか……。雨粒は急激に直径を増す。そこでふと、狩人は眼を凝らした。
 ――なんだ、あれは。
 烈しい雨の帳の向こう。林立する岩山がすれすれに天と触れる境界だった。笠を持ちあげ、狩人は息を呑んだ。
 濃紫色の雨雲が渦を巻いていた。分厚い雲の底だった。天神の腕が伸びるように、漏斗ろうと状の雲の帯が下界へくだる気配を見せた。いや、そこに何かがいた。
 影。動く。翼。脚。――あれは生命いのちある者。
 瞬間、空気の焼ける臭いがした。
 丸鳥の悲鳴だ。御者も叫んでいる。雷鳴なのか車の横転した音なのか、判断する前に荷台から投げ出された。その先が谷底ではないほどには幸運だった。視界の回転。転がった砂利の上。ようやく止まり、仰向けに眼を開いたとき雨が止んでいた。
 見えたもの、それは棘のある鱗。唸り声と静電気。恐ろしく太い四肢。
 ――そこは巨獣の腹の下。
 頭上で空を斬る音がした。
 狩人はとっさに身を投げ出す。大地を抉る音のあとに、背中に強い衝撃が来た。土くれや石と共に、狩人は宙を舞った。再度の衝撃。御者の興奮した声に身を起こすと、全速力で逃げる荷車に再び狩人は拾われていた。
 御者への感謝より何よりも、狩人は己を吹き飛ばした者の姿に釘付けになっていた。挑むように、断崖の縁から混沌の天を睨む者。棘のある尾。白きたてがみ。その身に稲妻を従えた、猛き青金色の獣。
 何を見つめている……。打たれたように思い出し、狩人も首を巡らせた。
 暗い渦を解き始めた雲海の底、下界の森、あいだに広がる雨の層。もはやどこにも、異質なものなど見つけることはできない。
 あの影……。
 彼は一瞬の嵐と共にすでに形もなくなっていた。幻でも見たというのか。いや、決してそうではない……あの青き獣も一心にあれを見上げ、今にも跳びかからんばかりに唸りをあげていたではないか!
 しかしその獣の姿も、瞬く間に雨の向こうへと消えていってしまった……。
 ぬぐい去ったように、空は晴れた。
 空気は爽やかにみずみずしい。浮かぶ無数の水蒸気は、陽の光の透明な輝きを幾千にも反射するようだ。嵐の気配は梢の雫に残る程度で、小鳥たちは何も知らずにめいめいの歌をさえずっている。狩人は笠の雨滴を切ると、走り去る荷車に手をふった。
 振りかえれば、出迎えたのは見事な石段。風雨にれた朱塗りの大門の下を、硫黄の香りを含む特有の風が流れて来る。
 知る人ぞ知る深山の温泉郷・ユクモ村に、狩人は呼ばれてやって来たのだ。
 山中での災難など忘れたように、村を見上げた口元に浮かぶのは笑み。
 自然の気まぐれはいつものことだ、驚くには当たらない。怖れるには当たらない、彼らは敵ではないのだから。縁があれば、再び相まみえるだろう。互いに何者として出会うのかは、その時に決めればよいことだ。
 ひとつ頷くと狩人は荷物を背負い直し、最初の石段に足をかけた。

(おわり)
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教官大好き!でも訓練所お腹いっぱい

初心忘れるべからず。でも少しだるいんです・・・

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