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モンスターハンター!2 1章

2009-2010にかけて執筆したMHP2G小説です。


《あらすじ》

夏祭を間近に控えたポッケ村。そんな中、浮かれる村付き新米ハンター
ヒュー・パーシヴァルを突如訪ねてきた人物が。それはまさかの、
「や、愚弟! お前が持ち出した家宝を取り戻しに来たお兄さんですよ!」
あ、兄貴!? でも家宝って……、なんのこっちゃ!
初めての狩場、初めてのモンスター。それだけでも大変なのに兄弟の背後にちらつく怪しい影が!?
MHP2Gを下敷きに展開する「モンスターハンター!」第二段。
銀嶺の双剣士 の続きに当たるお話です。


 モンスターハンター! 荒天の弓使い


 1章プロローグ

 男が一人、疾走していた。
 濃い大気のむせ返るような緑の合間。枯葉と腐葉土を高く跳ね上げ、前方を邪魔するツルやツタは容赦なくへし折って。身を包む黒紫色の防具の下を滝のように汗が流れる。背中に見える長大な太刀。ハンターだ。
 いつの間にか男を挟むようにして、もう二人の狩人が並行に疾駆していた。一人は無骨なハンマーを背負い、一人は弓を背負っている。三人は軽く目線で頷きあう。
 ――ザッ!
 密林が終わる。疾駆してきたそのままの勢いで森の境界から飛び出せば、カッと照らしてくる白熱光。驚いたように太刀の男は足を止め、一度止めた足はすぐには動かず、彼は膝に手をついて荒い呼吸を繰り返した。
「――急いで!」 追い越して行った仲間が呼ぶ。そして。
 ズン……、ズシン……!
 背後から迫りくるのは、大地を揺るがす重低音。
 ――来る!
「グオオオオオオオオオオオ!!」
 木端微塵に粉砕された樹木のかけらが飛び散った。
 憤怒の咆哮を轟かせ、盛大に森を破壊しながら現れたのは緑の女王・リオレイア。
 雌火竜と呼ばれ、大陸東部の温帯や熱帯において最も有名かつ危険な飛竜の一である。小山のような巨躯。鋼の刃もはね返す堅殻を持ち、その爪その牙は大型草食竜すらチーズのように裂き、噛み砕く。背や尾の棘に毒まで持つという凶悪ぶりは、すでに人の手に負えるものではない。生態系の頂点に君臨する生き物だった。
 怒り狂う竜の口から金の火の粉が漏れ出ている。火竜の名は伊達ではないのだ。ブレスを吐かれてはたまらない。逃げる男を呼ぶ仲間の声が高くなった。
 広い砂地に身を隠すものなど何一つない。なのに先に逃げた二人のハンターはどういうわけか広場の中心で立ち止まり、太刀の男も彼ら目がけて走っていく。
 地響きを立てて竜が迫る。男の背に嵐に似た息がかかる。
 ガバリ。唾液をひいて悪魔じみたアゴが開いた。
「ギャオオオオオオオオオン!!」
 悲鳴を上げたのは竜だった。
 何が起きたか、彼女は理解できなかったに違いない。前方に身を投げ出した男の後ろで、下半身を大地に埋めた巨大な飛竜はもがきにもがく。ハンターたちの仕掛けた落とし穴にはまったのだ。その鼻面に弾ける赤い玉。ボフッと噴き出た麻酔薬を肺腑の奥まで吸い込んで、白目をむいてリオレイアは昏倒した。
 ――捕獲、完了である。
「……やったか」
「ああ。危ないところだったな」
 もはや力を失った大地の女王に三つの人影が落ちる。
 それぞれ様相は違えども、頭のてっぺんから爪先まで物々しいほどの完全武装……とは言っても所詮は人だ。もし踏み潰されでもすれば、あっさりと命を散らすだろう――そのか弱い人の身でありながら荒ぶる野生の化身たる竜を捕え、狩る者たち。
 モンスターハンターと人は呼んだ。
 ある者は生活の糧として、ある者は富と名声を求め、またある者はおのれの知識と力を示すために。
 大陸中を闊歩する危険な飛竜や牙獣を相手に、命を賭して戦いを挑む狩人たち。豊かな自然の恩恵を受け、また逆に脅かされながら生きる人間社会にとって、彼らはすでに欠かせない存在である。
 とはいえ、ハンターに舞いこむ仕事はピンからキリまでだ。簡単な採集依頼もあれば巨竜の討伐も、と幅広い。たった三人だけで狂風のごときリオレイアを捕獲してしまうとなれば、ここに佇む狩人たちは中でも上位の者に違いなかった。
「いやぁ、しかし今回も見事に決まりましたねぇ」
 ハンマーを背負ったハンターが弓使いの男を振り向いた。
 ゲリョスシリーズというぴったりした装備。やや間延びした声の女は人懐こそうな笑顔にふさわしく、ヘルムからはみ出た金の巻き毛に明るい陽光を弾けさせている。
「毎度のことながら、あなたの読みはよく当たります」
「そうでもないよ、エム。あと一歩で、せっかく捕まえたレイアを解体して、胃の中からクロウを引っ張り出す羽目になるところだった。閃光玉はどうしたんだ?」
「すまん」
 答えた太刀使いはヘルムを脱ぐと、滴り落ちる汗をぬぐった。後ろで結った黒い直毛は長く、黄色い肌にアーモンド形の目。律義そうな東方系の人間である。
「はずした」
「だから太刀ばかりじゃなくて、たまには投擲とうてきも練習しろって言ってるのに」
「練習ではない。修行だ」
 弓使いの男は嘆息しつつも、そつなく狼煙を上げている。ベースキャンプで待つアイルーたちへの合図だ。三人だけで運ぶにはリオレイアは大きすぎる。
「さてと」
 青い空に立ち昇るピンク色の煙を見ながら、弓使いは爽やかに笑った。
 荒くれ揃いのハンターにしては、やたらと顔立ちの整った男だった。羽飾りの付いたキャップが印象的なバトルUシリーズがよく似合う。赤銅色の髪に映える鮮やかなブルーの瞳。ただしそこには、どこか斜に構えた光が宿っていた。
「前にも言った通り、街に帰ったらちょっと休暇をいただくよ」
「なんです。まさかデートの予定とかですかぁ? いくら後腐れないとはいってもですねぇ、そう度々相手を変えて……」
「おいおい、ひとを遊び人みたいに言わないでくれるかな。声を掛けてくるのはむこうなんだから、邪険にしても失礼だろう。まぁ、それはともかく今回は別件だ」
「ほう。一人で狩りたいモンスターでもいたか」
「固いぞ、クロウ。ハンターは狩りしかしないとでも? それは君だけだ」
「…………」
 睨まれた弓使いは観念したように諸手を上げる。ひらひら振ってみせた。
「実は、うちの家宝を無断で持ち出した不届き者がいてね。取り返しに行くのさ」
「家宝とは、そりゃまたけったいな。取り返しにってどこへです、セイン?」
 名を呼ばれて、弓使いセインはにやりと人の悪そうな笑みを浮かべる。
 不思議そうな仲間に背を向け、見上げるのは遥かに遠い北の空だ。
「ちょっと、白夜のフラヒヤ山脈へ……ね!」


(「2章 兄貴襲来」へ続く)

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